ゴーン氏は、当初の有価証券報告書の虚偽記載の他に、特別背任罪でも起訴されました。
 そもそも特別背任罪とは、何でしょうか。
 取締役等の特別背任罪は、会社法960条1項3号に規定があり、「自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています。
 これは、刑法247条の背任罪の加重規定と考えおり、同条は「他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されています。

 細かい議論はありますが、背任罪は、(1)他人のための事務処理者(身分犯)が、(2)図利・加害目的(利益を得たり、害を与える目的)で、(3)任務違背行為(信義誠実義務に反する行為)を行い、(4)財産上の損害を与えた場合に成立する犯罪です。
 特別背任罪は、会社の取締役等、一般の事務処理者よりも広範な権限を有する者について、刑法の背任罪の罪を重くした規定となっています。

 報道によると、ゴーン氏は、
(a)2008年に約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えたこと
(b)この契約を自分に戻す際に約30億円分の信用保証に協力したサウジアラビアの実業家ハリド・ジュファリ氏に対し、日産子会社から2009~2012年に計1470万ドル(約12億8400万円)を不正に送金したこと
の2つの被疑事実について、特別背任罪で追起訴されたようです。
 
 いずれも(1)取締役であるゴーン氏が、(2)自らの利益を得る目的で、(3)取締役の忠実義務・善管注意義務等に違反して、(4)日産に損害を与えており、被疑事実が事実であれば、特別背任罪の成立は免れないと思われます。